今年聴いた音楽を紹介してみる【アドベントカレンダー2021 4日目】
この記事はICON アドベントカレンダー4日目の記事です。
はじめに
こんにちは、グラフィック班に所属しているt(今年度会計)です。今年もあっという間に終わりましたね。時間の過ぎる早さに焦りすら感じてしまいます。
この記事では普段私が聴いている音楽のうち、これは好きだな、紹介したいなと思ったものを上げていこうと思っています。
音楽!
私は音楽を聴くのが大好きです。一度ヘッドホンやアンプなどの機材を買って環境さえ揃えればそれをずっと使えるし、最近はサブスクで月額を払えば好きな音楽を無限に聴けるようになったし 音楽って凄くコストパフォーマンスの高い趣味ですよね。いい時代に生まれてきたんだなと心から思います。
注意書き、というか予防線を張ってるだけなのですが 私は音楽の歴史とかには詳しくなく、また楽器も全く弾けません 音楽に関しての感想は思いついたことを並べて適当言ってるだけです
フィーリング、大事ですよね。(?)
ブログを書くのも人生初だったりします
好きな音楽を全部紹介...しようとすると無限に記事が書き終わらなくなってしまうので、
今回は「2021年に活動のあったアーティスト」縛りで記事を作りました。
ランク付けみたいなのをしたくなかったのでアルバム(EP)のリリース日順で並べています。「おまけ」では、今年リリースされた作品はあまり刺さらなかったけど、アーティスト自体は好きだから過去の作品を紹介したい...という人たちの作品を並べています。
目次
- はじめに
- 目次
- 2月23日 - 파란노을(Parannoul)
- 2月26日 - Architects
- 4月23日 - Porter Robinson
- 4月30日 - Royal Blood
- 6月17日 - Pendulum
- 8月20日 - Ginger Root
- 12月1日 - YOASOBI
- おまけ
- おわりに
2月23日 - 파란노을(Parannoul)
– To See the Next Part Of the Dream (アルバム)
Parannoulは韓国出身のシューゲイザー(歪んだギターと浮遊感のある音が特徴の音楽ジャンル)というジャンルで活動しているソロミュージシャンです。
楽器は全部DAW(PC上での音楽制作を可能にするソフトのようなもの)のプラグインで鳴らしていて、ボーカルは自分の持ってるスマホ(Galaxy)で録音しているらしく 何というか、現代だからこそ出せたアルバムなのかな、という感じがします。少なくとも自分には打ち込みで作られた音には聞こえません、生楽器を使ったと言われたら信じてしまうと思います。
曲はというと1曲目からかなり変化球で攻めてきます。映画「リリイ・シュシュのすべて」に登場するセリフのサンプリング音源が挿入されたイントロから始まり、続いて乾いたドラムの音と歪んで割れたギターの音が流れてきて、不穏なピアノとともに気だるい雰囲気のまま終わりまで曲が進行していきます。本人曰く「不親切なアルバム」らしいですが、そのスタートに相応しい尖り方だと感じました。
「Befautiful World」のYoutubeのMVでは、「Collection of Beautiful World」と題された、韓国の様々な場所の写真がスライドショー形式で流れてきます。
曲以外の面で何か挙げるとすると、インタビューが非常に面白かったです。
作曲者と自分のメンタリティに似ている部分があると(勝手に)感じ、また好きなアニメに「Serial Experiments Lain」が挙げられているのを知って曲についてますます興味が湧きました。Lainは最高です
インタビューを見た後歌詞を理解しようと思い、韓国語で書かれている歌詞の英詩を見つけてきて、それを日本語に訳して…みたいな作業をしたのを覚えています。アーティストについてよく知ろうとすると、曲の意味を解釈しやすくなるし、曲の歌詞について共感できる部分とそうでない部分とがはっきりしやすくなるのですごく面白いです。
本人がインタビューで「 20歳まで夢ばかり見ていた主人公が、現実と向き合う場面を表現したアルバム」と語っていることからも分かりますが、どこか明るくなりきれない、曇った感じの雰囲気がアルバムに込められている気がします。刺さる人には刺さるし、刺さらない人には全然刺さらない、まさに「不親切なアルバム」だと思います。
2月26日 - Architects
- For Those That Wish To Exist (アルバム)
Architectsはイギリスのメタルコア(最近は音楽性が変わってきてて結構怪しいが)バンドです。15年ほど前から活動しています。
数年前彼らの楽曲「Doomsday」がYoutubeのおすすめに流れてきて、耳に残るギターリフ、ドラムの変拍子、そしてボーカルの歌い方すべての美しさに一目惚れしたのがきっかけで彼らを知りました。
Doomsday は癌で早逝したバンドの元リードギターのために作られた曲で、彼の双子で現在も同じバンドに所属しているドラマー、Danが作詞を担当しており、今回紹介するアルバムの一つ前のアルバム「Holy Hell」に収録されています。
やや難解な歌詞なのですがすごくきれいに意訳しているサイトがあるので貼っておきます。(https://note.com/alpha2111/n/n711de726be5c)
今年出たアルバム「For Those That Wish To Exist」について紹介します。
アルバムアートには窓から差す光に照らされながら協会に佇む宇宙飛行士が描写されています。これは同アルバムの作詞を担っているDanが人間社会に対して長年抱いていたイメージでもあり、本人は「我々がいかに私達の住んでいる自然界から完全に切り離され、異質になってしまったのかを映し出している」と語っています。
インタビュー等を基に自分なりにまとめると、Architectsはこのアルバムにおいて「世界の変化に対して私たちが無力なことに対しての絶望」を描写していて、
アルバムを「文明社会が直面している最大の問題」について問いを投げかけ、答えを見つけるために私たちに何ができて、何をする必要があるかを熟慮するために「自身を省みる」ためのものだとしています。
アルバムをリリースするタイミングでDanがインタビューを受けているのですが、それを一部引用します。
(訳)『...(略)子供を持つと、彼らの視点で世界を見るようになる。…(略)あなたは、彼女の長く豊かな人生を邪魔するものについて考えるようになる。私たちのせいで世界は死んでいっているのに、誰も気にしていない。私たちは崖っぷちに向かって行進しているのに、そのことに対して無関心なのです』
「政治家に矛先を向ける代わりに、鏡を見て自分たちが何をしなければならないのか問いかけなければならない。変革は個人レベルから始めなければならない。」
私は彼らと違って普通に肉を食べるし、地球環境に対してやっていることとしてはせいぜい道路や川にゴミを捨てないとか、食べ物は残さず頂くとか、その程度なのですが…
肉食が地球温暖化に及ぼす影響について調べてみたり、プラスチックの廃止の是非について調べてみたりできたし、普段無視しがちなテーマについて考える機会を貰ったのには意味があったと思います。
シリアスな話をしても面白くないので音楽面の話をしましょう
長年キャリアを積んでいるだけあって、めちゃくちゃ演奏が丁寧で、派手さは少ないですがどの楽器も安定感が凄いです。Youtubeに上がっているライブ映像などを見ても各楽器の演奏の上手さがよく分かります。(語彙力不足...)
個人的にはボーカルの歌い方の引き出しの多さにすごく惹かれます。名前を挙げるならLinkin Parkのリードボーカルと少し近いかもしれません きれいな歌い方と叫ぶような歌い方の両方が使えるタイプの人です。
純粋に何となく聴く音楽としても十分楽しめると思います。
アルバム内のナンバー#9「Little Wonder」と#14「Meteor」は比較的ポップな音をしており、ジャンルに親しみがない人でも比較的聴きやすいと思います。
(オーケストラとの共演。Spotifyで聴けないのが勿体ない)
4月23日 - Porter Robinson
- Nurture (アルバム)
Porter Robinsonはアメリカ出身の、電子音楽を作っているDJです。
2014年に本人初のアルバム「Worlds」をリリースしていて、その後紆余曲折ありながら7年ぶりに完成させたアルバムのようです。
すごく独特な音楽でジャンル分けしづらいのですが、素直な歌詞も含めて温かみのある電子音楽、といった感じです。単にポップミュージックと言ってしまった方が早いのかもしれません
「Worlds」はポップではあるが音が尖っていて圧が強めの曲が多い印象だったのでそれまでのPorterの曲と比較すると別物感がすごいです。(Worlds自体もPorterがそれまでと異なるベクトルの音楽を作っているのを象徴するアルバムだったので、今回再び方向転換を遂げたことになります。)
billboardが長いインタビューを行っているので掲載しておきます。詳細については省略しますが、各曲の制作の際の心情や、「おおかみこどもの雨と雪」のサントラを手掛けた高木正勝さんと交流した際の嬉しさなどを語っています。
Porterは日本の文化になじみ深いようで、2016年には「Shelter」という曲で、今年は「Musician」という曲でアニメMVを出したりもしています。特にShelterのMVにはストーリーがあり完成度がかなり高くて凄いです。
日本の文化から受けた影響は本人にとって非常に重要なもののようで、今作「Nurture」では日本盤の曲タイトルや歌詞の対訳などを本人が監修しており、また日本盤のボーナストラックとして水曜日のカンパネラと共同制作した「fullmoon lullaby」を収録していて、Spotify上でも日本からのアクセスであれば聴くことができます。
なおYoutubeに公式がアップロードしているNurtureの曲の全てにおいて日本語字幕が利用できます。
4月30日 - Royal Blood
- Typhoons (アルバム)
Royal Bloodはイギリスでロックデュオとして活動しているミュージシャンです。ベースを使ってギターのような音を出す(?)独特な演奏が特徴で、ドラムとベースの2楽器しか使っていないはずなのに工夫をしてうまく音に厚みを出しているのが面白いです。
アルバム内の曲では#2の「Oblivion」がダントツでテンションが上がります。
楽器数が少ないのが功を奏しているのか音は比較的キャッチーで聴き疲れしにくく、さっき紹介した同国のアーティストArchitectsと違い小難しい歌詞も一切出てきません。ふわふわ聴くのに非常に良いです
彼らの特徴は謎のMVのセンスにあります。
youtu.be (2017年のアルバム 「How Did We Get So Dark」に収録)
前作収録曲「How Did We Get So Dark?」のMVです。サムネイルにもなっている髭の濃い人物と、バンドメンバー2人がウサギをかけて争います。曲の中盤に差し掛かると車の上ににウサギを乗せたままカーチェイスが始まり、次に銃撃戦が始まったと思ったら今度はニンジンを持った女性たちが現れて車を取り囲み始めて...どこから突っ込んでいいか分かりません。
youtu.be (2021年のアルバム 「Typoons」に収録)
今作収録曲「Boilermaker」のMVです。マスクを被った男が増殖しながらリズムに合わせて謎ダンスを踊っています。全編にわたってよくわからないことになってますが、ギリギリおしゃれだと言えなくもない...かも?
youtu.be (2014年のアルバム、「Royal Blood」に収録)
デビューアルバム収録曲「Figure It Out」のMVです。赤く着色された映像と青く着色された映像が交互に流れています。 3Dメガネをつけろってことなんですかね
肝心の曲なのですがアルバムを重ねていくごとに丸くなっていってる感じがして、今作「Typhoons」の評価は評論家、ユーザー両視点から見ても賛否両論分かれる感じになっています。個人的には大好きなアルバムで、5月~8月くらいまでのめり込んでいたのもありSpotifyの今年もっとも聞いたアルバムに選ばれました。今回この記事で紹介している他のアルバムと比較しても非常にポップで聴きやすいアルバムです。
6月17日 - Pendulum
- Elemental (EP)
Pendulumはオーストラリア出身のアーティストで、DnBとオルタナロックの中間みたいな感じの音楽を作っています 活動前期の曲と後期の曲で微妙に印象が違いますが
去年秋に2つのシングル「Driver」「Nothing For Free」が出て、 何だかんだで1年ちょいくらいかかってこうしてEPを出せたようです。曲数4つしかないけど
最初聴いたときは正直Driver以外微妙だな…過去作の方が好きだな…って感じだったんですが 3周くらいするとちょっと好きになってきました 過去作より聴きやすくなり棘が減った印象はありますが曲数が少ないだけあってきちんと全曲違う雰囲気を出してるのがよいです
初期中期のPendulumのような力強さを感じる#1、メロディーの良さが際立っていてほとんどポップミュージックのような仕上がりになっている#2、いい意味で古さを感じる#3、後期のPendulumの曲に近い、ロック味強めの#4 と全曲キャラが立っています。
もし聴いてくれた方がいれば
1曲目が好きな人は彼らの初期のアルバム「Hold Your Colour」
2,4曲目が好きなら彼らの後半のアルバム「Immersion」
が刺さりやすい気がします というかPendulumに関してはアルバム未収録のEPとかシングルいっぱい出してるのでアルバム単位じゃなくてSpotifyとかで人気曲順で漁っていった方が幸せになれるかもしれないです
Elementalの3曲目はPendulumの曲としては異色すぎてよく分かりません Feintってアーティストの初期中期あたりの作品とかが系統が近いかもしれません
Feintもめちゃくちゃ好きなアーティストです。DnBと呼ばれるジャンルの音楽を作っており、現在も活動しています。(記事下部のおまけで改めて紹介します)
8月20日 - Ginger Root
- City Slicker(EP)
Ginger Rootはアメリカ合衆国の音楽プロジェクトです。
Cameron Lewという方が一人で活動していて、インディーポップ?と呼ばれる系統の音楽を作っています。
(本人は自身の音楽を”Aggressive Elevator Soul”と表現しています。)
公式ホームページ
の説明文(12/11現在)には、「(訳)1981年に公開された架空の日本映画「街のやつ」をアメリカで映画化したとき、Ginger Rootにサウンドトラックを作らせたとしたら? 新作EP、「City Slicker」みたいな感じになるだろう。」と書いてあります。
アルバムの顔役の曲「City Slicker」のMVはこちらです。
でかくて分厚いアンテナ付きトランシーバー、ブラウン管でできた分厚いコンピューター、小さな麻雀卓…
もはや私たちの世代の人間は直接触ったことがないであろう代物が色々出てきます。80年代を生きたことがないので動画が80年代を上手く再現できているかどうかは分からないのですが、確かにレトロな雰囲気はある気がします。アスペクト比が4:3だったり、意図的に画質が落とされたりしているのもいいですね。
動画の最後に「つづく」とあるように、次の曲にMVが続いています。
最初に登場人物同士のやり取りがあって、その後タクシーが走り出したと思ったらデカデカと表示される「The End」の文字列…「つづく」とは何だったのか
よく見てみるとクレジットの間に歌詞が挟まっています。タイトルにもきちんとLyric Videoと書いてありますね。騙されたわけではなさそうです
Lewの(実質)ソロプロジェクトであることを考えると動画の凝りようにとても凄みを感じます。動画も基本的に自分で編集しているようです。
アーティスト本人について少し掘り下げてみましょう。
今作に関する日本語でのインタビューが見つからなかったので、過去作「Rikki」のリリースの際のインタビューを見てみることにします。
https://www.sleepyhead.club/ginger_root_interview
(Ginger Root(ジンジャールート)『RIKKI』インタビュー前編。記憶を巡るニューアルバムとDIY精神から生まれるクリエイションへの愛。)
大学では映像系の学科を専攻していたようで、Ginger Rootとしての音楽制作もそのころから始まったようです。なるほど映像も音楽もできるのはそういう理由か、と合点が行きました。前作「Rikki」に収録されている曲「Karaoke」のMVを撮る際には事情があって50人近く呼んでいた知り合いが借りているスタジオまで撮影に来れず、苦肉の策としてフリー素材の”Stock Image”の人間のハリボテを用意して撮影を行ったそうです。
こういう風に柔軟に機転を利かせられる人のことを賢いと言うんだろうなと感心してばかりです。
12月1日 - YOASOBI
- THE BOOK 2 (アルバム)
YOASOBIは(改めて説明する必要もないかもしれませんが)日本の、小説を音楽にする音楽ユニットです。2021年の日本のトップアーティストやトップアルバムなどの上位に必ず名前が入っていて日本人なら多分名前は聴いたことがあるアーティストだと思います。
「monogatary.com」というソニーミュージックが運営するサイト内の小説を音楽にするというプロジェクトとして、過去にバンドをやっていてボーカロイド曲の作曲なども手掛けているAyaseさんとシンガーソングライターとして活動していたikuraさんがそれぞれ声をかけられて結成したようです。初期は小説を音楽として再構築するのに苦心していたようで、最初のシングル「夜に駆ける」を完成させるのには3ヵ月もの時間がかかったようです。
サークルの先輩が推しているのを知って前作「THE BOOK」を聴いてみたのがきっかけでよく聴くようになりました。前作もそうだったんですが1つのコンセプトをもってアルバムを作るというより、既に出ているシングルを集めてベスト盤のような形で短いアルバムにしているのが面白いです。YoutubeやSpotifyの普及で可能になった配信方式なのかな?と勝手に思っています。
THE BOOKにはイントロ(#1Epilogue)とアウトロ(#9Prologue)があって比較的統一感を感じられましたが(曲順逆で再生するのが正解なのか?みたいな議論もどっかで見た気がします)今作は完全にシングル集という感じがします。何周しても飽きにくくてそれはそれで良いんですが
お気に入りの曲は「怪物」で、シングルでしか出てなかったときに一時期ずっとループしてた記憶があります。日本語の歌詞は直接頭に入ってくるのがいいですね
おまけ
内容がちょっと少なく、このまま記事を終わらせるのは味気ないので今年に活動があったアーティストのうち、2021年の作品は本編で言及するほど刺さらなかったけど紹介しないのももったいないな…という人たちを紹介しようと思います。
1.Infected Mushroom
まずはイスラエル出身の音楽ユニットのInfected Mushroomです。ジャンルは一応サイケデリックトランス、に分けられるようですが雑食で様々なジャンルの楽器を使用しているため単に電子音楽と言ってしまった方がいいかもしれません。
彼らの曲の特徴は細かく刻まれたキーボードやドラムの音、左右遠近を感じさせるような立体的な音作り、曲の後半にギターなどを使って盛り上がりのピークを持ってくるような構成、などがあります。(実際に曲を聴いてもらった方が分かりやすいかも..)
プレイリストは自分がよく聞く曲を集めてます。最初の2曲は聴きやすい曲を置いたつもりです。個人的な最推しの曲は「Pink Nightmares」で、最推しアルバムはダントツで「Vicious Delicious」です。
「Vicious Delicious」はInfected Mushroomの曲が持つ奇妙な世界観をボーカルとギターの成分を増やしてかなり聴きやすくしたアルバムという印象で、(もはやトランスと言っていいのか怪しい部分はあるが)特に最初の5曲は初めて聴いたときかなり衝撃を受けました。
余談ですがリスト中6曲目「The Pretender」はFoo Fightersというバンドの曲(ニルヴァーナの元ドラマーが始めた音楽プロジェクト)でそれをIMがカバーしたものです。原曲とカバーでアレンジに大きな違いがあり曲の印象は全く異なりますが、両方とも非常に素敵な曲に仕上がっています。
2.Celldweler
Klaytonという人物による、ソロの電子音楽プロジェクトです。
なんと1969年生まれで現在52歳(!)なのですが相変わらず尖った曲を作り続けており、今年も複数のシングルと1枚のEPをリリースしています。グラ班所属にもかかわらずオリジナルの絵を全く描けず練習に逃げている自分としてはクリエイター精神旺盛な彼のような人物には頭が上がりません。なお同氏は「プロジェクト名義」のようなものをたくさん持っており、
ページ内#Discographyをみると「Immortal(停止中)」「Circle of Dust」「Argyle Park(停止中)」「Celldweller」「FreqGen」「Scandroid」「Klayton」の実に8つもの名前を使い分けていることが分かります。各名義で違うテイストの曲をリリースしており、Celldweller、Scandroidの2つがこれらの中では比較的ポピュラーなものだと思われます。
面白いのが、Celldwellerの曲をKlaytonがRemixしていたり、Celldwellerの曲にScandroidがフィーチャリングされてたりします。本人の中ではそれぞれが別人格なのでしょうか...それとも音楽性の違うプロジェクトが混ざって1つの曲を作っている、ということを強調したいのでしょうか...真相は謎です。一人しかいないはずなんですよね 影分身?
Celldwellerの音楽の特徴はロックミュージックのようなものを電子音楽として完結させているところにあり、生楽器での演奏と比べると結構音が湿っています。(特に2ndアルバム以降に顕著)
初期は電子音楽ぽさはあまり濃くなく、独特の雰囲気を形成するのに一役買ってる、くらいの感じだったのですが中期以降は完全に電子音楽化していて、中期以降の音楽性は上で紹介したPendulumに近い感じになっていると思います。
最推し曲は「Own Little World」です。独特な世界観の歌詞とかっこつけた感じの演奏が中二病を再発させてくれます。最推しアルバムは「Wish Upon A Blackstar」なのですが、不親切なことに物理アルバムとして当時発売されたものと現在ストリーミングで配信されているものは曲順が違い、また曲間の美しいクロスフェードも全カットされてしまっています...残念。(※←12/31追記、Spotify以外の配信ではフェードありの曲順で聴けるようです。"Deluxe Edition"と表記のあるウニのようなアルバムアートを着たバージョンです。(Spotify上でDeluxeと表記されているものは通常版にインストを加えただけのものです))
3.Feint
FeintはDnB(=ドラムンベース)と呼ばれる分野で曲を作っているイギリスのアーティストで、2011年頃から活動しています。
18歳の頃「Liquicity」というレーベルのYoutubeチャンネルにアップロードされていた曲の数々に感銘を受け、自分もここで音楽を作りたい、と思ったのが音楽をやる最初のきっかけだったようです。
そして実際に現在、MonstercatやLiquicityといったジャンルの中では比較的大きなレーベルと契約して曲をリリースしており(!)その才能を遺憾なく発揮しているようです。
数多くある趣味の一つにゲームを挙げていて、どのような音楽からインスピレーションを受けたかという質問に対して、DnB以外のジャンルではファイナルファンタジーのサウンドトラックなどを手掛ける植松伸夫さんの音楽を好んで聴いていたと語っています。
自分では基本的にボーカル部分を歌わず、曲に歌をつける場合は他のアーティストをフィーチャリングするのが彼の音楽の特徴です。また、今年4月にリリースされた曲「Weavers」では本人初の試みとしてボーカロイドを使用しており、7月の曲「Fading Wind」では"ボーカロイドっぽい歌い方"を含んだ歌が挿入されていて両方とも非常にユニークな曲に仕上がっています。
もちろん歌のない、電子音のみで構成された曲も非常に完成度が高く、SoundcloudやYoutube上にSpotifyなどのストリーミングサービスでは配信されていないが何度も聞きこめるくらい好きになれる曲が散りばめられているので(特にYT)興味を持っていただけた方は探してみるといいかもしれません。
4.STARSET
-Transmissions(2014)
STARSETはアメリカ出身のロックバンドで、2014年にアルバム「Transmissions」でデビューし、今年には4枚目のアルバム「HORIZONS」をリリースしています。
SF映画などで使われていそうな壮大なサウンドの中に非常に強い思想、メッセージを込めているのがバンドの特徴です。STARSETについてまとめている日本語の記事からバンド結成のきっかけを引用します。
彼らのバンド結成のはじまりは、2013年7月1日、へびつかい座星団の中にある惑星「Prox」から地球に届いた送信信号(transmission)「The Message」。2047年の「Prox」から現在の人類宛に送信された「The Message」は、サイエンス・テクノロジーの急激な進歩により人類が終焉を迎えることと、それを回避する知識を伝えるもの。1891年ニュヨークにてJPモルガンによって組織され1956年に米政府組織となるU.S.C.O.O.(The United States Capitalism Oversight Organization)の追っ手から逃れながら、「The Starset Society」(スターセット結社)に届いたそのメッセージを同結社のトップのワイズ博士(Dr. Aston Wise)らが解読。そしてそのメッセージを音楽とメディアを通じて人々に伝えるべくスターセットがその命を受け結成されます。
オハイオ州立大学でアビオニクスの分野で電気工学博士号を取得し、アメリカ空軍の研究を終え、フランスの国際宇宙大学(International Space University)で実際に教鞭を執っていたダスティン・ベイツの”設定”は別次元のレベルに到達しており、既に「The Starset Society」の組織の起源、経緯、意味を記したグラフィックノベル『The Prox Transmissions』をリリース。さらに今年秋にあのマーベル・コミックよりその続編となるグラフィックノベルが出版される予定であることが発表されています。
ダスティン・ベイツとは同バンドのリードボーカリストのことであり、熱心に勉強に取り組みつつ音楽においても成功している数少ない人物の一人です。
彼はカール・セーガンという、天文学者でもあり、SF作家でもあった人物からの影響を繰り返し語っています。カール・セーガンが自書やTVインタビューで科学的思考の大切さについて説き、ダスティン・ベイツが音楽を通じて子どもたちがサイエンスに興味を持ってくれたら素晴らしいと言っているのにはある種の共通点を感じます。
動画はアルバム「Transmissions」の曲、「My Demons」のMVです。
冒頭に「The following dramatization has been commissioned by the starset society(このドラマはThe Starset Societyからの依頼によるものです)」と字幕が流れてから始まるMVには、上記した「設定」を想起させるような場面が次々と登場し、壮大なサウンドも相まって聴く人を彼らの世界観に引きずり込んでいきます。
動画の最後にロゴと共に現れる「thestarsetsociety.org」は実在するドメインで、サイトにはサイエンスに関する様々な記事が掲載されている、という徹底ぶりです。
今年出たアルバム「HORIZONS」には、過去作にあったような1度聴いただけで耳に残るような曲が無かったのが残念ですがミュージックビデオは相変わらず示唆に富んだものとなっており映像を含んだ体験としては非常に楽しめるものとなっていると思います。
おわりに
見返してみると、取り上げている音楽のジャンルにかなり偏りがあり音楽の紹介というよりもはや趣味の紹介と言った方がいいかもしれないレベルの記事になってしまいましたが...紹介したアーティストの魅力や面白さみたいなのが1ミリでも伝わっていたら幸いです。
最後に!
年末年始にやることがなくて困っている人のために、私の好きなYoutuberの出している動画シリーズ「Mind Field」を紹介します。
Mind Fieldは、「Vsauce」というYoutubeチャンネルで動画投稿をしている「Michael Stevens」による、特に人間の脳や意識などの働きに焦点を置いた心理学的実験を収録したドキュメンタリー番組です。ディスカバリーチャンネルなどのドキュメンタリー番組と同じく、分野に対して特別な知識を持たずともカジュアルに内容を楽しむことができます。Youtube Premium用コンテンツとして制作された同シリーズですが、現在は全話無料で、日本語字幕付きで中身を見ることができます。シーズン3まで展開されており、
シーズン1では「1話:隔離が人に及ぼす影響」「2話:集団に馴染むための同調」「8話:人工知能について」...などを含めた8話、
シーズン2では「1話:トロッコ問題を現実世界で再現すると被験者はどのような行動を取るか」「3話:自白の強要はどのように行われるか」...などを含めた8話
シーズン3では「1話:知性(短期記憶/言語能力)のトレードオフ仮説」...などを含めた8話が展開されています。
動画内にしばしば登場する、実験に参加している「何も知らない一般人」が本当に何も知らないのか、台本などが一切存在せず全く自然に振舞っているのか疑問が残るのはこのような番組の特性として仕方のないものですが、そのような側面を抜きにしても人間心理に興味がある人は教育番組のようなものとして楽しめると思うので、ぜひチェックしてみてください。
それでは、よいお年を。